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研究室について
分散型電源を考慮した電力システムの計画・運用に関する研究
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●研究の背景


図 1 協調運用システムの概念
 我が国では従来の地域独占の形態から新たな電気事業者の参入を許可し、競争によって電気事業の経済性向上、活性化を図るための電力自由化が進められています。このような状況下では独立系発電事業者(IPP)や特定規模電気事業者(PPS)などの参入により、予期せぬ重潮流など系統運用面において問題が生じる可能性があります。また、従来の垂直統合型の一般電気事業者のように総括原価方式で設備コストを回収できないため、設備投資をより慎重に行う必要があります。
 一方、地球環境問題への対応のため太陽光・風力発電などの利用は不可欠になってきています。さらに、コージェネレーションシステム(CGS)や電池型電力貯蔵装置の技術開発が進展してきており、分散電源の導入量は今後増加することが想定されます。
 このような背景をもとに、我々の研究グループでは、図1に示すように一般電気事業者が需要家の所有する分散電源や電力貯蔵装置と協調的に運用することで、自由化された競争的電力システムの安定運用に貢献するような枠組み(制度)を提案しています


●研究の概要

◇送電ネットワークの混雑緩和に関する研究

 自由化された送電系統において発生し得る問題の1つとして、潮流の複雑化による送電線の混雑が挙げられます。この問題の対策として送電線を建設することが考えられますが、将来の潮流分布の予測が困難であることやそれに伴う投資回収リスクの問題などから必ずしも容易ではないと考えられます。そこで本研究グループでは、需要家が所有する電力貯蔵装置や分散電源との協調運用による送電ネットワーク混雑緩和に関する研究を行っています[1],[2]。需要家との間で、貯蔵装置や分散電源の設備費の一部を、一般電気事業者が補助する代わりに一般電気事業者の要請する時間帯は貯蔵装置や分散電源の出力を最大にするという契約を提案し、夏期のピーク負荷を低減して混雑を緩和することを考えています。この契約を想定した上で双方に経済的メリットを与える可能性を評価することを研究目的としており、簡単なモデル系統による試算の結果、双方に経済的メリットを与える可能性があることが分かっています。

◇配電ネットワークの電圧制御に関する研究

 配電系統における問題点としては、分散電源からの逆潮流電力が増加してくると従来の電圧制御方法では対処しきれなくなり、配電系統内に電圧の規定値違反が生じる可能性が挙げられます。問題の対策として需要家に設置された電力貯蔵装置を有効活用することを考えています。電気事業者は電力貯蔵装置を設置する需要家に補助を支払い、その代わりに系統内に電圧規定値違反が生じる時間帯において、需要家は貯蔵装置から無効電力を出力させるという契約を想定しています。放射状モデル系統における試算結果として一般電気事業者が需要家に補助を支払い、より大きな電力貯蔵装置を導入してもらうことで、系統内の電圧制御に必要なコストの低減につながる可能性があります。

◇分散電源から見た電力システムへの貢献可能性の評価に関する研究
 住宅用に導入が見込まれる固体高分子型燃料電池(PEFC)CGSに注目し、多数世帯に導入された燃料電池CGSを統合的に制御し、系統運用へ貢献することを考えています。電力需要の大きな昼間において、系統から分散電源の集合に対して出力増加を要請している状況を想定し、系統への貢献に必要な分散電源の追加的コストを評価しています。系統貢献するためのコストは、電力需要の大きな夏期と給湯需要の大きな冬季において安価となりますが、中間期は逆潮流電力が大きくなるため、高くなるという結果になっています。


●主要論文

1) 古澤健,杉原英治,辻毅一郎,三谷康範:「需要家設置の電力貯蔵装置による送電ネットワークの混雑緩和に関する研究」,電気学会論文誌B,125巻3号,pp.293-301,2005年

2) 柳瀬一徳,古澤健,杉原英治,辻毅一郎:「需要家CGSとの協調運用による送電ネットワーク混雑緩和に関する基礎的研究」,電力・エネルギー部門大会, No.147, Aug. 2005年

3) 福田陽一,古澤健,杉原英治,辻毅一郎:「需要家設置の電力貯蔵装置による配電系統の電圧適正化―協調運用のためのインセンティブに関する考察―」,平成17年度電力技術・電力系統技術合同研究会,PE-05-93,PSE-05-100,福井,Sep. 2004年

4) 川口敏昭,杉原英治,辻毅一郎:「住宅用コージェネレーションの統合制御による系統運用への貢献可能性評価」,電力・エネルギー部門大会, No.22, Aug. 2005年

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